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解雇・雇止め

解雇に関する諸問題

解雇権濫用法理とは・・・?

多くの労働者は使用者から支払われる賃金のみを生活の糧としているため、 突然解雇を言い渡されるとその後の生活に窮することになります。 そこで労働者を保護するために、使用者の解雇権の行使は 「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することが出来ない場合には、 解雇権の濫用として無効」とされ、解雇の行使に一定の制限が付されています。 これを「解雇権濫用の法理」(労働契約法16条)といいます。

つまり、理由がなく労働者を解雇することは許されないことはもちろんですが、 それなりの理由があったとしても、社会的に見て「解雇されても仕方ない」、 「このまま雇用を継続することは期待されない」というレベルに達していなければ、 解雇することは非常に困難なのです。

普通解雇と懲戒解雇

解雇は普通解雇と懲戒解雇に区別されます。普通解雇は、労働契約を継続していくことに困難な事情があり、 やむを得ず行う解雇のことです。例えば仕事をする上での能力に問題がある、 病気や事故によって長期入院などが必要となり職場復帰の見込みがない、 また、職場での協調性を著しく欠く場合などにやむを得ず行う解雇です。

労働基準法第19条による解雇制限はありますが、いかなる事由があるときに普通解雇するのかは、 基本的に使用者の自由です。しかし、解雇理由が「客観的に合理的なもの」でなければ解雇権の濫用となり、 無効となってしまいます。 能力面の問題や勤務態度が不良とされた場合でも、 原因は何か、評価は適正であるか、改善のために注意・指導を尽くしたか、 などを考慮する必要があります。健康状態の問題についても、業務内容等を勘案しながら、 正常な勤務に堪えられるかどうかを考慮する必要があります。

これに対し、懲戒解雇は、労働者が職務規律に違反(就業規則違反など)した場合や、 労働者に著しい非行があった場合に、懲戒処分として行われる解雇のことです。 懲戒処分により労働者は大きな不利益を受けることになるため、 懲戒解雇を含む懲戒処分の決定は、就業規則に規定された懲戒事由に該当する場合にのみ有効となります。 逆に言えば、就業規則に規定のない懲戒事由によって懲戒処分を行うことはできないのです。

さらに、就業規則に懲戒解雇の事由が規定されている場合でも、懲戒処分には相当性の原則が適用され、 均衡を欠く処分は懲戒権の濫用として無効となります。例えば、 「無断欠勤1日で懲戒解雇」と就業規則に規定したとしても、このような懲戒解雇をすることはできません。

整理解雇

整理解雇とは普通解雇に属するもので、使用者側の経営事情等により生じた従業員数削減の必要性に基づき、 労働者を解雇することをいいます。一般的に、整理解雇は次の4つの要件を満たさなければ 解雇権の濫用になると解されています。

  1. 人員整理の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 被解雇者選定の合理性
  4. 手続の妥当性

もっとも、近時の裁判例をみると、必ずしもこれら4つの事項をすべて満たさなくてもよい、 すなわち、4項目は「要件」ではなく「要素」であり、 整理解雇はそれらの要素に関する諸事情の総合的な判断によるとの判断枠組み(4要素説)も増えてきるようです。

労働基準法による解雇の予告義務

使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。 30日前に予告をしない使用者は30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。 このように労働基準法では労働者の解雇後の生活を保護するために、 使用者に事前の予告や手当金を支払うことを義務付けているのです。

もっとも、「天災事変やその他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」 または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」においては、 事前の予告または手当金の支払いを要しないものとされています(労働基準法20条1項但書)。 この場合、労働基準監督署の除外認定を得れば理論上は予告手当を支払わずに即時解雇することが可能ですが、 除外認定を得るためには一定期間を要することと、認定が得られないリスクがあることをふまえると、 予告手当を支払って即時解雇する方が賢明です。

雇止めに関する諸問題

雇止めと解雇の共通点

有期労働契約において期間満了に伴い契約を終了する場合のことを「雇止め」といいます。 「雇止め」はもともと期間が決まっていたのですから、 一見すると雇止めがなされようが労働者が害されることはないようにも思えます。 しかし、雇止めも解雇も、従前の労働契約を名実ともに終了させようとする使用者の意思表示という点で共通する部分があります。

また、有期労働契約であっても、労働者が使用者から支払われる賃金のみを生活の糧としている実態は変わりません。 有期契約労働者は、期間満了後はどうなるのか、契約を更新してもらえるのか、 といった不安を抱えながら日々仕事を続けることになります。 あるいは、何度も契約更新が行われるうちに、きっと次回も更新してもらえるだろうという期待感が生じてきます。 そのため「雇止め」においても、解雇と同様、法により一定の制限が課されているのです(労働契約法19条)。

雇止めに関する6つの判断要素

契約を反復更新してきた有期労働契約者の雇止めを行う場合、 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、 雇止めが無効と判断される可能性があります。

雇止めについて争われた裁判例を見ると、6つの判断要素を用いて当該契約関係の状況を総合的に判断して いることが分かります。その結果、契約期間の満了により当然に契約関係が終了するものと判断した事案も中にはありますが、 多くは契約関係の終了に制約を加え、解雇に関する法理の類推適用等により雇止めの可否を判断しており、 結果として雇止めが認められにくい傾向にあるようです。

雇止めを行うのであれば、下表の判断要素に照らし合わせて、訴訟リスクも考慮しつつ、 慎重に行う必要があります。

判断要素 具体例
業務の客観的内容
  • 従事する仕事の種類・内容・勤務の形態
    (業務内容の恒常性・臨時性、業務内容についての正社員との同一性の有無等)
契約上の地位の性格
  • 地位の基幹性・臨時性(嘱託・非常勤講師等)
  • 労働条件についての正社員との同一性の有無
当事者の主観的態様
  • 継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等
    (採用に際しての雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の見込み等についての雇主側からの説明等) 
更新の手続・実態
  • 契約更新時における手続の厳格性の程度(更新手続の有無・時期・方法、更新の可否の判断方法等)
他の労働者の更新状況 
  • 契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数等)
  • 同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等
その他
  • 有期労働契約を締結した経緯
  • 勤続年数・年齢等の上限の設定等



解雇・雇止め問題の対処法

解雇・雇止めの労使間トラブル防止のために

以上のように、解雇・雇止めに関しては、労働者の生活を守るために、 法が労働者を手厚く保護しており、たとえ問題社員がいたとしても安易に解雇できないことがわかります。 しかし、使用者側にまったく打つ手がないということではありません。

就業規則の定め方如何でリスクも変わってきますし、問題社員へのアプローチの仕方によっても、 その後の展開は大きく変わります。問題社員をいち早く解雇したいが、 普通解雇が正しい決断なのか判断できない、また将来に向けてトラブルが起こらないよう事前に対策をしておきたいなど、 少しでもご不安がございましたら専門家に相談することをお勧めします。

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